yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ナショナル・シアター ・ライヴ『お気に召すまま As You Like It』@TOHOシネマズ西宮10月19日

昨日が最終日。「良い」と評判を聞いていたので、慌てて行ってきた。劇場、舞台設定、演出、そして何よりも観客がすばらしい。オフィシャルサイトをリンクしておく。

先日ロンドンで見た『ジェイン・エア』のシアターはLyttelton Theatre(収容人員890)で、こちらは一番大きなOlivier Theatre(収容人員1150)でのもの。このブログ記事にLyttelton Theatreが最も大きなシアターだと書いたのは誤り。名前からして推測できたのに恥ずかしい。映像で見る限り、劇場の造りも、観客も随分違った印象。次回は必ずやこちらで芝居を見ようって思った。National Theatreは3つのシアターからなっていて、上の二つの他にもう一つ、ずっと小さなDorfman Theatre(収容人員450)がある。ここでは2年前に芝居を見て記事にしている。いずれのシアターも演劇のメッカ、ウエストエンドに張り合って(?)新しい演出の芝居を打っている。2年前も、また今回のロンドンでもNational Theatreの新傾向に度肝を抜かれたけれど、映像で見る『As You Like It』にはそれ以上に驚いた。

それにしてもいながらにしてロンドンの芝居が見られるとは。すごい時代になったもの。来月、11月10日から16日までTOHO系映画館で『一人の男と二人の主人』が公開される。ゴルドーニの『二人の主人を一度にもつと』をベースにしたドタバタ喜劇らしい。絶対ゆかなきゃ。昨日、観客は最終日にもかかわらず10人程度。認知度が低いためだろうけど、残念。まあ、万人向きとはいえない芝居ではあるかも。今回のロンドン行き、観光客につくづくうんざりして帰ってきたけれど、このNTLIiveを見て、やっぱり「ロンドン」の奥行きが深いことに感じ入った。こういうところに来ている人たちと街を歩いている人たちは違うんですね。NTLIiveでは観客席もしっかりと映しているので、ご覧ください。

今回のプロダクションと主要キャストを以下に。

プロダクション
Director Polly Findlay
Set Designer Lizzie Clachan
Costume Designer Christina Cunningham
Lighting Designer Orlando Gough

キャスト
Rosalind Rosalie Craig
Orlando Joe Bannister
Celia Patsy Ferran
Oliver Philip Arditti
Audrey Siobhán McSweeney
Touchstone Mark Benton

以下にナショナル・シアター公式サイトからお借りした彼らの写真を。

Joe Bannister and Rosalie Craig as Orlando and Rosalind. Photo by Johan Persson.

Patsy Ferran and Rosalie Craig as Celia and Rosalind. Photo by Johan Persson.

Philip Arditti and Patsy Ferran as Oliver and Celia. Photo by Johan Persson.


ご覧のように俳優は「普段着」で演じている。

かのマギー・スミスもヴァネッサ・レッドグレーヴも演じたというロザリンド、今回はミュージカル畑のRosalie Craigが演じた。辛辣な劇評で有名なガーディアン紙も褒めている

バックステージでもハイテンションだったようで、それがそのままあの舞台につながっている。特に最後は彼女の一人舞台の感があった。私はこのハイテンションにちょっと引いてしまったけど、観客には大ウケのようだった。監督のFindlayとはうまがあったらしく、イケイケドンドンムードだったよう。彼女たちが全体の雰囲気を形作ったんでしょうね。

シーリアを演じたPatsy Ferranがとても良かった。Rosalie Craigとは「陽と隠」を成してうまく収まっていた。最近の注目株らしい。美人でもなく、華やかでもないけれど、とても味のある役者さん。Rosalie Craigがあまりにも目立つので、それを陰で支えるときの加減が難しいけど、それを自然体で演じて見せたのに感心。

男性陣では主役級ではなくワキが良かった。上の写真にもあげたけれどMark Bentonを始め「道化役」の数人が秀逸だった。この芝居、そこで決まるんですよね。シェイクスピアの芝居では悲劇でもコミックリリーフを担うFoolが重要な役割を果たすけれど、喜劇ならなおさら。

私にとっての『お気に召すまま』の最高峰は蜷川幸雄演出のもの。DVDで見たのだけれど、実際の舞台を見ていないことが残念だった。記事にしている。2004年の「彩の国さいたま芸術劇場大ホール公演」の録画らしい。これ、オールメールキャスト。主たる配役は以下だった。

オーランドー       小栗旬
前侯爵の娘ロザリンド   成宮寛貴
侯爵の娘シーリア     月川勇気(悠貴)

男女「転覆」の構図はこちらの方がNTLiveよりも過激だった。成宮寛貴のロザリンドが眼に浮かぶ。彼、今頃どこで何をしているんだろう。あそこまで才能のある役者、なんとか戻って欲しい。

で、今回のNTLive版に戻って、良かったのは何といっても舞台装置。アーデンの森を表すのに天井から何十脚もぶら下げた椅子なんですからね。これもある種の「転覆」を表象しているんだろうけど、面白かった。芝居自体が「『転覆』の後始末(大団円)」に則っているんだから、この過激は大歓迎。また、先日みたLyttletonシアターでの『ジェイン・エア』と同じく、役者が引っ込まないで舞台の後方に座って出番を待っている「光景」も面白い。こういうのが今の演出法の主流?

観客にも感激した。観客の質の高さとバランスの良さがそのままロンドンが芝居のメッカであることをしっかりと伝えていた。