yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

能『鶴亀』 in 「青嵐大会」@河村能楽堂5月5日

河村青嵐会の社中会。稽古をされている方々のおさらい会なのだけど、合間にプロの演者さんたちの仕舞が入る。さらにこの能『鶴亀』では、素人はシテを演じられた方のみで、あとはみなさんプロの方々。それが無料ですからね、申し訳ない。以下に演者一覧、それと「能楽.com」からお借りしたあらすじをあげておく。

シテ 皇帝   中本春基
シテツレ 鶴  松野浩行
シテツレ 亀  田茂井廣道  
ワキ 大臣   原大
ワキツレ 従臣 原陸
アイ 官人   山口耕道

笛   森田保美
小鼓  吉阪一郎
大鼓  河村大
太鼓  前川光範

あらすじ
いにしえの中国にて。新年を迎えた皇帝の宮殿でお正月の行事が執り行われます。皇帝に仕える官人が登場し、皇帝が月宮殿にお越しになるので、殿上人は皆参上するように、と触れ回ります。皇帝が不老門に現れて初春の日の輝きをご覧になると、万民が天に響く祝賀の声を上げます。宮殿の庭は金銀珠玉に満ちて美しいことこの上ない様子。こうしたなか、大臣が進み出て例年のように鶴亀に舞をさせ、その後、月宮殿で舞楽をなさいませ、と皇帝に奏上します。鶴と亀が舞って皇帝の長寿を祝うと、皇帝も喜び、みずから立って舞います。さらに殿上人たちが舞って祝賀の場を盛り上げた後、皇帝は御輿に乗って長生殿へ還ります。

シテツレの鶴と亀はそれぞれ鶴と亀の飾り物を頭につけ、女面で登場。

まずアイが登場。大蔵流狂言師の方。声がよく通り存在感がある。大蔵流の方々、みなさん声がとてもいい。萬斎さんのようなくぐもった声ではなく、明瞭な響きのある声。どこか何ともいえない可笑しみを醸し出されるのも秀逸。

そしてシテの登場。シテの方、素人ながら頑張っておられた。このシテ、珍しく直面。緊張しておられたけど、次第にそれがほぐれ、役にのめり込んで行く様がよくわかった。

ワキは原大さん。声よし、姿よし。ワキは面をつけないので、表情がはっきりとわかる。また大抵は露払いの役どころなので、その第一声がとても重要。できればメリハリのある顔立ちがいい。原大さんと福王和幸さんのお二人が、ワキ役として私の中ではその点で両雄。京都のワークショップでただ一度お見かけしただけだったのだけど、安田登さんもよかった。

ワキツレの松野浩行さんと田茂井廣道さん。やっぱり上手い!本来ならどちらかがシテを張られるはず。お二人とも以前に見ている。松野浩行さんは『弱法師』のシテで見ている。田茂井廣道さんはシテではなかったけど『初桜能』とロームシアターでの『TAMURA』で拝見している。関西には若手の「役者」が揃っているというか、層が厚いのでは。トップの次に控える役者が関東よりも多いように見受けられる。観世流も西高東低?「西高東低」は囃子方全般にもいえるかも。とはいっても、みなさん、ある地域に固まって活動されているわけではなく、活躍は全国区なんですけどね。

そしてこの日の囃子方。すごい面々。まず小鼓の吉阪一郎さん。いわずとしれた大倉源次郎さんのお弟子さん。そして大鼓は石井流の河村大さん。彼の大鼓も『TAMURA』で聴いている。太鼓は金春流太鼓方の前川光範さん。なんども演奏は聴いているけど、その都度緩急自在な太鼓の音と合間に入る掛け声に聞き惚れる。笛は森田流の森田保美さん。多分聞くのは初めて。繊細な優しい笛。

この能の舞台が始まると客が一挙に増えた。途中で入ってくる人も多く、年配者の数が多く、耳が遠いせいか私語の声が大きい。ずっとざわざわした雰囲気で、演者の皆さんに気の毒な気がした。大阪のみならず、京都の見所もかなり問題があるような。とくに年配女性の傍若無人ぶりに閉口した。とはいえ、(どなたかの社中である)彼女たちの方が、この場にいる権利を担保しているのかもしれないのですが。

そうそう、初めて伺った河村能楽堂。歴史ある能楽堂。古いけれどとても居心地のいい能楽堂。わがAlma mater、同志社大学のすぐそば。在学中も、そのあとで非常勤で教えに行っていた時にも全く気付かなかった。こんなに近場に能楽堂があったんだ。そういえば1年だけ居た大学の寮に能楽部に所属している先輩がいたっけ。改めてご縁を噛み締めている。