yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『三人吉三』劇団花吹雪@新開地劇場5月3日夜の部

感激した!どうしても今日中にその思いを伝えたくて記事にしている。「劇団花吹雪」で『三人吉三』を見るのは初めて。大衆演劇では小泉たつみさんで見ている。たつみ版を見たときも感激したけど、花吹雪版はそれ以上に唸った。歌舞伎もうかうかしていられない。短い稽古でここまでのレベルのものを提供してくれるんですから。とはいえ、「花吹雪」だからここまでできたのかもしれない。現在のところ、芝居では大衆演劇界でダントツにトップを行っている。

この劇団を評して「タカラズカみたい」ってよくいわれるんですけどね、それって多分「軽い」、「チャラい」っていう意味なんですよね。この劇団の意趣を凝らしたショーを見れば宝塚顔負けの華やかさではあるけれど、でも劇団の魅力はやっぱりお芝居なんですよ。それは私が最初にここを見た7年前から変わらない。どこまでも「今の芝居」なんです。でも軽いわけではない。九州系劇団のあのドロドロした意味もなく重ーい「過去の遺物」的芝居ではなく、かといっておちゃらけの馬鹿馬鹿しいものでもない。しっかりとした「芯」を感じさせる、今を生きるわれわれがしっかりと受けっとめることのできる芝居を魅せてくれる。でも先々月にはどう血迷ったか、『喧嘩屋五郎兵衛』やらの九州系劇団十八番の芝居をいくつか乗せて、うんざりでしたけどね。「それ、あなたたちのニンにまるで合っていない!」となんども叫びそうになってしまった。私のダーイキライな芝居。安っぽい「悲劇」。

黙阿弥とか南北などの古典をやってほしいとずっと思ってきた。彼らの実力なら十分できると分かっていたから。だから今日は本当に嬉しかった。

おなじみの黙阿弥作『三人吉三』。そのままやれば長すぎる。それを1時間20分に短くしている。しかも要点を省かずに。幕前の「つなぎ」を効果的に利用していた。それにも肝になる場面はきっちりと組み込まれた構成。この構成の妙に感心した。また決め台詞(さすが黙阿弥先生、やたらと多いんですよね)は取捨選択され、主筋に関係するもののみになっていた。それをあの今っぽい役者さんたちが言うんですからね。モダンですよ。

モダンといえば、バックの音楽も全て今のもの。演歌なし。これ、とても良かった!観客を乗せる工夫。この劇団のお客さん、他劇団よりも若いですからね。それとね、あの串田和美演出、勘九郎、七之助主演のコクーン歌舞伎を彷彿させるところがいくつかあったんですよ。特に最後のシーン。降りしきる雪の中で自害する三人の最期。圧巻!

古典を舞台に乗せるのは、やっぱり緊張するものだと思う。でも劇団花吹雪は重石やら枠組みを取っ払って、あくまでも自分たちのものとして提供してくれる。今を生きている私たちの前に古典を。そこが他劇団とは一線を画しているところだと思う。歌舞伎が新しい試みに挑戦しているけれど、大衆演劇界では劇団花吹雪がそれと太刀打ちするだけの「実績」を挙げてきている。他にもそういう劇団があるけれど、いずれも関西出身の劇団。

でもね、優れた関西系の劇団、残念ながら最近は座員が減ってきている。それとともにパワーも落ちるのは必定。でも、その中で劇団花吹雪は座員が増えている。新人が二人増え、加えて京之介座長の弟、彩夜華さんが復帰された。男性陣の充実ぶりが半端ない。これも魅力。

芝居の演出が斬新。色々な工夫が見て取れる。以前に見たときと同じだったことがほとんどない。芝居の力量のほどがわかるでしょ?舞踊ショーも常に新しい演出で魅せる。舞踊ショーについてはここでは詳細は控えるけど、それでも一言。構成だけでなく、一人一人の踊りのレベルが高い。これが他劇団と決定的に違う。チャラくない。舞踊の基本をしっかりと学んだ人の舞踊。それに男性陣、みなさん美形。化粧なしでも。これも他劇団と違うところ。嘘だと疑う方はぜひ実見聞を。

今月の関西は激戦区。劇団もそれを分かっているから全力疾走!このパワフルな劇団が全力疾走なんですからね、面白くないわけがない。今月必見の劇団、劇場は劇団花吹雪の新開地劇場で決まり。