yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「奥庭狐火の段」in『本朝廿四孝』初春文楽公演@文楽劇場1月5日昼の部

最近になって「大夫」が「太夫」に変更になっているのに気づいた。「太夫」は「大」の中に点が入っているのを「ちょぼ」とよんで、歌舞伎語りの太夫に適用、人形浄瑠璃の語り手には使わないと聞いていたので、意外。以下「日経」の記事。

文楽協会と日本芸術文化振興会は14日、人形浄瑠璃文楽の語り手である太夫の芸名表記「○○大夫」を「○○太夫」に戻すと発表した。4月2日に初日を迎える国立文楽劇場(大阪市)の公演から変える。芸名で「太」の字の点が復活するのは約60年ぶり。

というわけで、遅まきながらここでも「太夫」を使うことにする。

「奥庭狐火の段」の演者は以下。

太夫  豊竹呂勢太夫
   三味線 竹澤宗助
   (ツレ)豊澤龍爾
    琴  鶴澤清公

  人形遣い
   花作り蓑作実は武田勝頼  吉田和生
   八重垣姫  桐竹勘十郎
   腰元・濡衣 吉田蓑助
   長尾謙信  吉田文司 
   白須賀六郎 吉田玉勢
   原小文治  吉田文哉

何と言っても呂勢さんが良かった。ドスが効いたというか、どっしりとした語りになっていた。私としては以前のあのちょっと高めのお声が好きなんですけどね。三味線がいつもの清治さんでなく、宗助さんだった。ご病気?と心配。宗助さんも昔から聴いて来た三味線弾きさんで、好きな弾き手さんなんですけどね。

呂勢さんは一皮むけたというか、上のステージに行かれたよう。鬼気迫る語りだった。かなりの睡眠不足で頭痛がひどく、痛み止めを飲んだせいか眠気が襲って来て、最初の「十種香の段」は朦朧としていた。津駒さんのあの低く唸る力強い語りにも関わらず、半分眠っていた。残念。我が身を呪う。

で、迎えた「奥庭狐火の段」。呂勢さんが颯爽というか、どっしりと構えた風で床に座り、語り始めると眠気が吹っ飛んだ。特に、「みすみす夫を見殺しにするは如何なる身の因果。アゝ、翅が欲しい、飛んで行きたい、知らせたい。逢ひたい、見たい」という八重垣姫の絞り上げるような「嘆き」には、鳥肌が立った。ぞくっととした。この嘆きが諏訪明神に聞き届けられ、諏訪法相の兜を被り明神使いの白狐の法力で、諏訪湖を渡ることができた。その時の姫のさま。「兜を取って頭に被けば忽ち姿狐火のここに燃え立ちかしこにも、乱るる姿は法性の兜を守護する不思議の有様、諏訪の湖歩渡理、早東雲と明け渡る、甲斐と越後両将とその名を今に残しける」と結ばれる。この詞の畳み掛けるような勢いが、姫の気持ちを的確に表現していた。ここにも鳥肌が立つ思いだった。

以下にこの公演のチラシの演目紹介と演者一覧をアップしておく。